読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

なんでやねん日記

なんでやねんです

「ザ・コーヴ」を見てきました

ぶつぶつぶやき

各地で巻き起こる上映反対運動やら、過激な内容に対する批判だとか、何かと話題の映画「ザ・コーヴ」を見てきました。アカデミー賞・長編ドキュメンタリー受賞作品です。


以下ネタばれあります。あと私は和歌山県出身で太地町にも何度か足を運んだことがあります。そんなが私が雑に書き散らした個人的な見解ばかりなので、合わない、と思ったら閉じちゃってください。


映画「ザ・コーヴ」オフィシャルサイト
ザ・コーヴ - Wikipedia
ページが見つかりません - MSN産経ニュース

舞台となるのは、和歌山県太地町。昔からクジラやイルカの追い込み漁が盛んで、現在も大規模な漁が行われている。
これに反対し、今回の撮影に踏み込んだのがイルカ保護の活動家、リック・オバリー。反対活動に賛成する仲間とともに、イルカ漁が行われる立ち入り禁止の入江(=コーヴ)への侵入を試みる。

…というのが、ざっとしたあらすじです。


で、感想なんですが、とりあえず「疲れる」作品でした。


何が疲れるのかというと、もうね、スクリーンから作り手の「イルカ漁滅ぼせ!」パワーが滲み出てるんですよ。「ほらほら、イルカ漁ってこんなに悪いことなんですよ」「見てみて、太地町の人ってこんなにひどい人間なんですよ」っていうメッセージを、使ってるシーンや音楽、構成、編集からひしひし感じるんです。
ドキュメンタリーなのにドラマティックに仕上げているから、どうしても出演者が演技しているみたいに見える。学者やら水産庁の人やらに話は聞いているのに、街の人たちの話は一切なく、オバリーが「彼らはこうだ」「こう話している」と説明しているだけ。(もしかすると話に応じてくれなかったのかもしれないけれど)。「漁師の人ってそんなに気性荒いの?」って思うほど、町民の怒ってるとこや撮影を邪魔してくる映像ばっかりすっぱぬき。鑑賞中、どうしても“作ってる”感がぬぐえず、それは、私が今まで見てきたドキュメンタリー作品とは、あまりにもかけ離れていましました。

「イルカ漁は本当に悪なのか?」ではなくて、「イルカ漁は悪!これもう間違いないからあなたも反対して!」っていう問題提起作品なんですよね、これ。
製作陣の気持ちが強いのも、彼らがイルカを愛する気持ちも伝わってくるんですが、あまりにも一方的なので“悪意”にすら感じてしまうんです。

もうひとつ、“時間”の説明が全くないことにも不信感が募りました。いったいいつ頃撮影されたものなのか、撮影にどれだけの時間をかけたのか、1日に起きたことを流しているのか、何日もかけて撮影したものを編集して1日の出来事っぽくみせているのか――それが全然わからないんです。オバリーの過去や太地町、撮影準備の裏側などのたくさんの要素が、ラストのイルカ漁に向けてバラバラにされて組み直されていていたので、時間の流れがよく理解できず、逆にリアリティが欠けていました。
それに、「警察やジャパニーズマフィアに監視されている」「尾行されている」「イルカ肉がクジラ肉に偽装されて販売されている」という発言もなんだかなあ、と。(正しくない情報という説明があるんですが)


ここまで割と否定的な意見ですが、さすがに、最後のイルカを殺すシーンはショッキングでした。イルカ=水族館やイルカショーで見るものというイメージが強くて、尋常じゃない鳴き声を上げながら槍のようなもので刺され、青い海が真っ赤に染まっていく様子は、思わず目をそむけてしまいました。(ちなみに、今はイルカが苦しまない方法で捕獲しているとのことです。どんなものなのかは知りませんが)
私は和歌山県出身なんですが、食用クジラは知っていたけれど食用イルカの存在は知らなかったし、ましてや口に入れたこともない。いくら地元の人が食べると言っても、あんなに量が必要なのかと素朴な疑問がわきました。(追記:他魚への影響が大きいため、生態系を崩さないためにとっているというのもあるそうです)


ただ、同時にこの漁に反対するなら、私たちが普段食べているお肉やお魚はどうなるんだろう、とも思いました。
生き物の命を奪って、いただく。人々がお金をもらうために、そして私たちが生きるために繰り返されている、永遠のループ。ただ単に、あまり流通していないというだけで、イルカ漁も一緒ではないのでしょうか。
私はきっと、あのスクリーンで、牛が殺されても豚が殺されても、同様に目をそむけたと思います。これ、間違ってますよね。生きるために他の生き物の命を奪う人間のエゴを、きちんと直視するべきですから。そういう喚起をするためにあの血に染まった海を見せるのはいいでしょう。でも、あれを「ほら残酷でしょう。かわいそうでしょう。だからイルカ漁はやめましょうね」って言うのはちょっとズレていると思いました。

昔、「自分たちで育てた豚を処分して食べる」授業を行っている学校を追ったドキュメンタリーがありました。最後は食べることを事前に知らせたうえでクラスで豚を飼う。子供たちにはだんだん豚に対する愛情が生まれる。処分の日が近付くと食べることは正しいのかどうか議論になる。「きちんと食べてあげることが大事」という結論になり、子供たちは涙を流しながらかわいがった豚の肉を食べて、「おいしかった」「ごちそうさま」と言う――。
本来のドキュメンタリーってこういうものだと思うんです。

さっきも言った通り、かなりドラマティックに編集されているので、映像としてはちゃんとした作品だと思います。アカデミー賞というのもうなずける。ただ、“ドキュメンタリー”を語る資格はないと思いました。



もしかすると、本当に太地町や日本はどこかの国や施設と癒着している悪い街なのかもしれない。漁師はマフィアなのかもしれない。捕獲する必要量以上のイルカを取っているのかもしれない。
真実は不透明ですが、この映画で描かれている“太地町”をそのまま受け入れるのはあまりにも危険すぎる。


ただ、上映反対運動はおかしいですよね。上映作品を見て、太地町バッシングがあったり、映画の情報をそのまま丸のみしてしまう人もいるとは思うんですが、それを力で抑え込むのはお門違いでしょう。見た人が自分で考え、判断し、行動するものじゃないでしょうか。
いいと思う人がいれば、悪いと思う人たちもいる。自分たちが何かを犠牲にして生きている。そういったことを改めてみつめ直すには、「ザ・コーヴ」、いい作品だったと思います。

乱筆失礼しました。