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なんでやねん日記

なんでやねんです

桜の話

あちこちで桜がぽんぽん咲いている。この前まで小さなつぼみだったはずなのに、いつの間にこんなに咲いたのだろう。そんなことを思いながら道中にあった桜の木を眺めていたら、花がひとつまるまる落ちてきた。さっきまで花がくっついていたであろう枝には、ちいさな鳥が止まっていた。どうやら鳥が花をついばんで蜜を吸い、下に落としていたようだ。桜の花が花のまま地上に落ちているのを見たことは幾度となくあったけれど、風か何かで落ちているものなのだとばかり思っていた。そうか、鳥のしわざだったのか。そうやって上を見上げている間にも、鳥は次々と私の頭上に花を落としてくる。くるくるくるくる落ちてくる淡いピンク色の花を見て、なんて贅沢なのだろう、と思った。桜の花を枝から離すなんて人間には(くくりが大きすぎるかもしれないが少なくとも私には)ひんしゅくを買う行為のような気がして、なかなかできることではない。鳥は蜜を吸って生きているからできることなのだ。宙を舞う桜をつかもうとしたけれど、風が吹いて思うようにつかめなかった。

どこにいてもどこで見ても桜はきれいだし、大好きだなのだけれど、やはり京都を離れて初めての春だからか、京都で見たたくさんの桜のことを思い出している。

花見客でごった返す円山公園で見た桜。川端二条にあるレトロな発電所沿いの桜。古いレールの上を歩きながら眺めたインクラインの桜。大好きなバーの窓から眺めた西木屋町の桜。印象的な桜が脳裏に次々と浮かぶのだけれど、特に強く思い出すのは加茂川で見た真っ暗な桜だ。

あの頃私は学生で、フリーペーパーを作る団体に所属していた。その人たちと花見をすることになって、とある女の子が場所をセッティングしてくれたのだけれど、がらんとした加茂川でもさらに北の方で、外灯も人通りもほぼなく辺りは真っ暗。飲み物や食べ物がどこにあるのかも見えない状態で、白い桜の輪郭がぼんやり暗闇に浮かんでいた。もうかなり前のことで、その場にいた人たちと何を話したのかも、何を飲んだのかもまったく覚えていない。でも、なんだかとても楽しかった記憶は残っている。

その桜のことは、つい最近まですっかり忘れていたのだけれど、先日、当時一緒に過ごした友達に会った際ふと思い出したのだ。その子に「あの花見のこと覚えてる?」と聞いたが、お酒が入っていたせいもあって、何と返事が返ってきたのか忘れてしまった。昔はどれだけお酒を飲んでも記憶がなくならなかったのにな、なんて思うきょうは4月1日。