なんでやねん日記

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もっとたくさんあいにいらしてください――椎名林檎「ちょっとしたレコ発2014 ~大阪港へ逆輸入~」

椎名林檎の「ちょっとしたレコ発2014」千秋楽公演に行ってきた。班大会、党大会は行けなかったので、林檎ちゃんの歌を生で聴くのは、東京事変の解散ライブ以来だった。

照明が落とされ、開演。暗いステージで中央に進む林檎ちゃんのシルエットを見ただけで泣いてしまった。我ながら泣くのが早すぎて引いた。(そのまま終盤までほぼ泣いていたせいで、会場を出るころにはアイメイクはぼろぼろ、鼻は詰まって呼吸がしづらかった)

マイクの前に立った林檎ちゃんは、長い黒髪を後ろで1つにしばり、白のシンプルなチャイナドレスを着ていた。体のラインがきれいに出ていた。

「もっとたくさんあいにいらしてください」

ライブは「ポルターガイスト」で幕を開けた。3枚目のアルバム「加爾基 精液 栗ノ花」に収録されている、大好きな曲。メトロノームの規則正しい音が心地よい。これからはじまる、まったく“ちょっと”していないライブへの期待が否が応にも高まった。冒頭のフレーズは、セルフカバーアルバムも出したし、Mステも出たし、アリーナツアーもするし、林檎ちゃんなりのこれからどんどん露出していきますから、というメッセージ代わりだったのかもしれない。

「母国情緒」「カプチーノ」「労働者」「とりこし苦労」「遭難」など、椎名林檎の曲、東京事変の曲、今回のアルバム「逆輸入」の曲がつきつぎと歌われていく。Mステでも歌われた「青春の瞬き」は東京事変の解散ライブの終盤でも歌われた曲であのときの感動が蘇ったし、「逆輸入」には収録されなかった「少女ロボット」や個人的に大好きな「愛妻家の朝食」も聞けたし、終始とても幸せな気持ちだった。

歌うとは知っていたけれど、やっぱり「traveling」には高揚した。宇多田ヒカルの曲の中でも上位に入るくらい好きな曲を、林檎ちゃんが歌ってくれるなんて。「とらーべりーん」ってコール&レスポンスしながら、また涙が止まらなかった。

本編の最後は、「逆輸入」では1番最初に収録されている「主演の女」。林檎ちゃんの力強い歌声、楽器の生の音、真っ赤な照明、すべてがかっこよくて圧巻だった。大友良英さんのアレンジも、生音だとより一層映えていてすごく素敵だった。

アンコールを希望する拍手は、すごくテンポが早くて、みんなが林檎ちゃんにもう一度会いたい気持ちが手の動きに表れているようだった。途中、拍手のテンポがぴったり合ったときがあって、静かに興奮した。ここにいる人、みんな林檎ちゃんが好きで、再びステージに現れるのを熱望している。

観客の拍手に応えて登場した林檎ちゃんは、新曲「逆さに数えて」を歌ってくれた。A面の「NIPPON」とはまた違う、とてもきれいなメロディーの曲だった。最後は、「逆輸入」に収録されている「真夏の脱獄者」。アルバムでは歌詞が英語になっていたけれど、原曲と同じ、日本語で歌ってくれた。

Wアンコールはなく、すぐに客席の照明がつき、閉場を知らせるアナウンスが流れた。観客は、連れと感想を語り合ったり、スマートフォンに視線を落としたりしながら、バラバラと会場を後にした。

帰宅中、電車に揺られながら、こうやって好きなアーティストの曲を聞き続けられるのはとても幸せなことだなと思った。東京事変が解散するとき、このまま林檎ちゃんが歌うことをやめてしまったらどうしよう、とほんの少しだけ考えてしまったから。

少し眠くなって目を閉じると、まぶたの裏に林檎ちゃんが履いていた蛍光色の黄色いスカートが浮かんだ。おそらくシルエットを計算し尽くして裁断されたスカートは、暗いステージでひときわ輝いていて、とても、とても美しかった。