なんでやねん日記

なんでやねんです

フードコート


フードコートが好きだ。



ショッピングセンターにある、安っぽい味の料理を出す飲食店街。
無数に並べられた、薄っぺらいテーブルとイス。誰かがのこした食べカス。
あの滑稽な空間が好きでたまらない。
理由はたぶん、母が好きだったからだ。


幼いころの私は、外食が苦手だった。
飲食店に入ると必ず吐き気がし、まともにご飯が食べられなかった。何度もトイレに行った。いつも、母が注文した料理をほんの少し横からつまむだけ。両親、特に外食をしたがる父は難儀だったことだろう。何度も「なんで食べられないのだ」と言われた。


しかし、フードコートは平気だった。
母に連れられていくフードコートは、気取った様子がなく、誰に対してもオープンで、とても気楽な空間だったからだ。
母はフードコートにあるさびれたデザート店で、ソフトクリームを食べるのが大好きだった。
お腹がすいているときは鉄板焼き屋のタコ焼きかお好み焼きを食べていた。
私はラーメンがほとんどだった。



大きな街を経験するにつれ、大きなフードコートも経験した。
ラーメン屋が何件もあったりして、石焼ビビンバが食べられたりして、有名チェーン店が入っていたりして。
あのさびれた街にある、小さな小さなフードコートとは規模も豪華さも違う。
私が知っているフードコートはこの街にはないが、それでも私はフードコートが大好きだ。
ショッピングセンターに行くと、必ずフードコートで食事をする。
安っぽいと、恰好悪いと言われてもかまわない。



そこには、幼き私と、私の食事を心配そうに見つめる母が隠れている。